クオリティ・ピッチング

投資とは全然関係のない本だ。
しかし、環境に適応して、結果を出し続けた黒田投手の考え方は
投資をやるうえでも非常に参考になると思い、書評を残そうと思う。

黒田投手のおさらい

知ってる人はさらっと流して欲しい。
経歴:広島東洋カープ→SFドジャース→NYヤンキース→広島東洋カープ
日米通算203勝184敗。

広島時代は150km/hを超える速球とフォークボールで三振を奪う先発完投型投手
MLB移籍後はツーシームを軸に内野ゴロを打たせる技巧派投手にモデルチェンジ
中継ぎや抑えに勝ちをよく消される

最も強いものではなく環境に適応したものが結果を残す

黒田投手がいかに柔軟な発想を持っていて、頭を使ってピッチングしているかよくわかる。
この本では映像がリンクされていて、一球一球振り返りながら、解説している動画もついている。
もちろん、この本は高いレベルの投手が読んで参考にするような技術的な側面もある。
巨人・菅野投手も大いに参考にしているそうだ。
しかし、野球選手ではない私は技術でなく精神面こそ大いに参考にすべきだろう。

日本時代、黒田投手を超える実績を残しながら、MLBで期待外れだった松坂大輔投手と比較してみると、環境に適応し続ける事が、結果を残し続けるには重要な事だとわかる。

ピッチングスタイルの変遷

広島時代の黒田投手は三振を取るタイプの投手で先発完投型だった。
これは当時の広島カープのチーム事情による。
当時の広島内野陣はお世辞にも守備の良くなかった。
ロペス、ディアス、東出、新井というメンバーだった。
内野は細かい連係プレーも必要とするため、コミニケーションが重要だ。
しかし、ダイヤモンドで飛び交う言語は英語、スペイン語、日本語、新井であり、
意思疎通は難しかっただろう。
では、内野ゴロではなく外野フライを打たせれば良いかというとそれもできない。
なぜなら、当時の広島市民球場はNPBのホーム球場で最も狭い球場だからだ。
プロの強打者なら多少打ち損じてもスタンドにぶち込まれてしまう。
三振が最もリスクの低いアウトの取り方だった。
選手層の薄さから中継ぎ、抑えは頼りにならず、完投しなければ勝ちを消されることもしばしばあった。

MLB移籍後はツーシームを主体とする打たせて取る投手に変わる。
黒田投手はMLB移籍後もイニングを稼げるイニングイータとして活躍した。
ヤンキース時代は200イニングを投げて防御率3点台とリーグを代表する先発投手であった。
三振を狙うピッチングは球数を必要とする。
レベルの高いMLBでは150km/hを超える速球は武器にはならない。
選球眼も良く、日本よりも細かいコントロールが必要とされる。
先発として長く活躍するには、少ない球数でアウトを稼ぐ打たせて取る投手へのモデルチェンジは必然であった。

一方で松坂投手は三振を取るスタイルにこだわっていたように思える。
150km/h台中盤の速球と切れの良いスライダーはMLBでも通用する武器であったが、
日本ではヒットで済む球もMLBではホームランにされてしまう。
厳しいところを突き、カウントを悪くして四球が増える。
結果として球数制限により5回、6回で降板するケースが多かった。

速球の球威や変化球の切れ。
松坂投手は黒田投手以上のものを持っていたかもしれない。
しかし、適応力の違いがとても大きな成績の差になっている。

環境に合わせる柔軟な姿勢

ピッチングスタイルだけではなく調整方法も日本時代から変更してる
日本では中6日の120球の登板サイクルだが、MLBでは中4日で100球の登板サイクルになる。

日本では先発投手は登板の2日前くらいにブルペンに入って、
ボールの調子を見ながら登板までに仕上げるらしい。
登板後の先発投手は2~3日は完全OFFが許されており、十分な休養ができる。
一方で、MLBでは登板予定が無くてもベンチ入りしなければならない。
中4日も時差の関係で実質3.5日しかない事もある。
黒田投手は日本時代の調整方法やめて、登板前のブルペンでは調子が良くても悪くても36球しか投げないようにしたらしい。
次の登板まで準備を完璧にする調整方法から、休養を優先しシーズン通して体力を維持する方法に切り替えた。

日本時代に実績がある調整方法にもかからず、環境が変われば新しい手法に切り替えられる。
新しい事に挑戦する勇気と柔軟な姿勢は流石としか言いようがない。

精神的に優位に立つための考え方

精神的に優位にたった状態で打者と対戦する事を非常に意識していた。
細かいコントロールを要求される局面は投手にとって追い込まれた状態らしい。
精神的に追い詰められると腕の振りが鈍くなり、投げたボールは甘く、痛打される。
逆にアバウトなコントールでも大丈夫な局面は精神的に優位に立った状態であり、
腕も振れて球威があり、結果的に良いコースに決まると考えている。

試合前の準備を十分にすることはもちろん。
試合中に自身の状態を把握し、軸となるボールを見つける事。
投手有利な状態で進めるための投球術。

如何に楽な状態で投げて結果を残すか。
そのような事をとても意識しているように感じた。

投資にあてはめてみると

相場は刻一刻と変化する。
いままで通用していた手法が局面が変わると通用しなくなる。
また時代も変われば株式市場でもてはやされるテーマも変わる。

環境が変化した事に気づけるか?
変化した環境に適応できるか?
今まで経験のない新しい事にチャレンジできるか?

このような事が重要になってくるだろう。

株式トレードは感情を大きく揺さぶってくる。
強欲や恐怖。
感情が判断を誤らせる。
恐怖で振り回される大衆をよそに、どのようにして精神的に優位な状態に立って相場に臨めるか?
そのための準備と心構え、自分がどのような人間か?

勝負の世界で結果を出し続ける人間の思考は、
相場という不安定な世界で生き残るためのヒントが大いに詰まっていると思う。

彼を知り己を知れば百戦殆うからず

孫氏